手術当日はいいお天気でした。クリニックの入り口を出ると、まずはトイレにいって、自分の姿を鏡で見ました。姿見があったので、できるだけ遠くまで下がりました。自分の顔、全身、洋服の細部まで当たり前ですがくっきり見えています。「うわあ、よくみえるなあ」、と思わず声に出してしまいました。
そして、トイレから出て外を見てみました。そこは14階で、ガラス張りの壁になっています。周りに高い建物もなく、見晴らしは抜群でした。外は青空が広がっており、澄み切った風景を目にしてしばらくは遠くの景色に見入っていました。ちょうどその場所はコーヒーや紅茶が飲めるスペースが設けてあり、長いすも置いてあったので、すぐに帰るのももったいないと思い、コーヒーを買って腰掛けていました。東京国際フォーラムの複雑なビルの形状や、遠くにある看板、下を見下ろすと沢山の人だかり・・・。いつもコンタクトレンズをしていて見えているはずなのに、裸眼で見るとなんと違った感覚で見ることができるのでしょうか。「ああ、これからコンタクトレンズやメガネの無い生活がはじまったんだ」改めて幸せを感じました。
もう既にお昼を過ぎていたので、早く帰ろうと思い外にでました。本当はもっとブラブラして帰りたかったのですが、今日は手術当日なので目に負担をかけたくないし、頻繁に点眼液を差すように指示されていたので守らなければなりません。銀ブラは明日以降のお楽しみとしてとっておきました。
外は少し風がありましたが、保護用眼鏡をかけているので特に目に風が当たることはなく、気になりませんでした。でも、万が一のことを考えて電車がホームに入るときは、眼鏡の上からも目をかばっていました。電車に乗ると入り口に立ちました。いつもなら、席を探して座わるのですが、今日はなんとなく窓の外がみたいと思ったからです。ずっと外を眺めていました。次の車両の遠くの吊広告を見たり、動く景色のずっと遠くまで見たり、もう今はただ嬉しくて嬉しくて、欲張って見ていました。これら嫌でも裸眼生活なのにこんなに無理しなくてもと、苦笑しました。
家に着いてもまもなく目がショボショボしてきて、涙が止まらなくなってきました。何度も瞬きしないと耐えられなくなったので、麻酔が切れてきたときに使う鎮痛剤を一滴差しました。するとすぐに痛みは消えました。
この日は守らなければならない項目が多かったので、注意事項の書かれたペーパーをよく読みました。寝る前は、顔は温タオルで拭く程度にし、絶対に目に水が入らないようにしました。目はこすってはいけないので家でもゴミが入らないように保護用眼鏡をかけっぱなしにしていました。テレビとパソコンはもちろん、本、雑誌、新聞は一切読まず、寝る前には保護用眼帯を装着し、テープでしっかり固定しぐっすり睡眠をとりました。
翌日目が覚め、保護用眼帯をはずすと、そこは今まで見たこともないような別世界でした。壁にかけてあったカレンダーの数字がずばっと目にとびこんできました。すべてがくっきりはっきりみえます。寝室に入ってくる朝日がまぶしくその日一日がとんでもなくよい日になるのではという予感がしました。
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